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Acroquest Technology株式会社のエンジニアが書く技術ブログ

コンピュータービジョン分野の国際学会「CVPR2026」で感じた変化

皆さんこんにちは Acroquest のデータサイエンスチーム「AcroYAMALEX」を率いるチームリーダー、@tereka114です。
AcroYAMALEX では、コンペティション参加・自社製品開発・技術研究に日々取り組んでいます。チーム紹介はこちら

6月3日(水)〜6月7日(日)に、コンピュータービジョンの学会CVPR2026へ参加するため、アメリカ・コロラド州デンバーへ行ってきました。
デンバーは標高5,280フィート、約1,600mに位置する都市で、Mile High City とも呼ばれています。夏場は湿度が低く、朝晩は比較的過ごしやすい気候でした。

CVPR2026

学会概要

CVPR2026の正式名称は「The IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition 2026」です。
コンピュータービジョンに関するトップクラスの会議で、今年はデンバーの Colorado Convention Center で開催されました。 実は、私が現地でCVPRに参加するのは、2018年以来、8年ぶりです。
当時は物体検出や画像認識の話題がかなり多かった記憶がありますが、今回は基盤モデル(Foundation Model)、VLM、動画理解、3D、ロボティクスなどの話題が多く、コンピュータービジョンの中心テーマもだいぶ変わってきたと感じました。

cvpr.thecvf.com

今年の傾向

オープニングのスライドでは、今回の参加者は約12,000人と紹介されていました。
私が最後に現地参加したCVPR2018では6,512人だったので、ほぼ倍の規模です。かなり人が増えました。 日本からの参加者は339人ほどとのことで、中国・韓国と比べると少ない数でした。

CVPR参加者推移図

CVPR2026国別参加者数

論文数も非常に多く、公式発表では16,092件の投稿に対して、4,071件の 発表論文 がありました。
メインカンファレンスの3日間では到底見切れず、ポスターを見るだけでもかなり大変でした。

CVPR論文数推移

テーマとしては、画像・動画生成、Vision-Language-Reasoning、Multimodal Learning、3D、医療・生物画像など、最近の技術トレンドがかなり反映されていました。
単純な Classification や Detection だけではなく、動画・言語・推論・3Dを含めて「実世界をどう理解するか」にテーマが広がっている印象です。

CVPR2026論文ジャンル

学会中では、DINO/DINOv3、SAM/SAM2、Grounding DINOといった単語を多く目にしました。 いずれも単体のモデルとして使われるだけでなく、さまざまな研究の土台となる基盤モデルとして利用されています。

項目 説明
DINO/DINOv3 画像から汎用的な特徴量を抽出するための自己教師あり学習モデルです。分類や検出のような特定タスクだけでなく、検索、異常検知、3D理解などの幅広いタスクでバックボーンとして使われています。
SAM/SAM2 画像や動画中の対象物を、プロンプトに応じてセグメンテーションするモデルです。アノテーション作成や後処理にも使いやすく、論文中でもデータセット構築やマスク生成の部品として利用されている例がありました。
Grounding DINO テキストで指定した対象を画像中から検出するモデルです。「犬」「車」のような固定カテゴリだけでなく、自然言語で指定した物体を探せるため、Open-Worldな物体検出の文脈で使われています。

これらを見て感じたのは、コンピュータービジョンの研究が、個別タスクごとに専用モデルを作る方向から、強力な基盤モデルをどう組み合わせるか、どう特定ドメインに適応させるか、という方向に移っていることです。 手元のデータが限られている場面でも、基盤モデル・自動アノテーション・少量Fine-tuningをうまく組み合わせることで、業務でもより高い精度を狙える可能性がある点で非常に興味深いと感じました。

Oral / Poster

採択論文の中でも特に選ばれたものは Oral として発表されます。
また、ポスターも1セッションで600枚以上並ぶ回があり、2時間で見て回る必要がありました。

現地参加で良いと思ったのは、特に次の2点です。

  1. 発表者と直接議論でき、論文だけでは分からない背景や実験の意図を聞ける
  2. 人の集まり具合から、参加者が注目している論文が分かる

オンラインでも論文自体は読めますが、著者とその場で話せるのは、やはり現地ならではの良さだと思います。

ポスターセッション

Expo / Demos

スポンサー企業のブースもありました。
以前参加したときは、顔認識のようなデモが多かった記憶がありますが、今回は自動運転やロボットの動作デモが多く見られました。 論文側でも3D、Open-World認識、ロボティクス、Embodied AI といったテーマが増えており、研究と産業応用の方向性が近づいているように感じました。

Reception

Receptionでは、夕食をいただきながらライブも聴けました。
パーティーのような雰囲気で、なかなか楽しかったです。

Receptionのライブ

論文

CVPR2026で個人的に面白いと感じた論文を紹介します。

SoccerMaster: A Vision Foundation Model for Soccer Understanding

Soccer Masterのアーキテクチャ&学習概念図

SoccerMasterは、タイトルの通り、サッカーに特化した Vision Foundation Model を構築する研究です。
サッカー動画理解では、選手検出、背番号認識、ピッチ登録、イベント分類、実況生成など、かなり多様なタスクがあります。 従来はそれぞれのタスクに特化したモデルを作ることが多かったのですが、本研究ではそれらを1つの基盤モデルとして扱おうとしています。 学習させた基盤モデルを使うことにより、実務としても学習なしで解析ができる、また、ダウンストリームタスクにおいても、一から学習させることよりも精度が高くなります。

特徴的なのは、SoccerFactory という自動構築パイプラインです。
放送映像に対して、フィールド登録、選手の検出・追跡・識別、SAM2を使った後処理などを組み合わせ、大規模な空間アノテーションを生成しています。 さらに、既存のサッカー動画データセットも統合し、マルチタスク事前学習に利用しています。 その結果、事前学習タスクでは DINOv3、SigLIP 2、サッカー特化モデルの MatchVision と比較して良い性能を示しています。

また、カメラキャリブレーション、複数物体追跡、実況生成といったダウンストリームタスクでも、軽量なFine-tuningにより、タスクや評価指標によってSOTAまたは競争力のある結果を示しています。 自動アノテーションを使う以上、その品質に影響される点はあります。
ただ、サッカーに限らず、特定ドメイン向けに「データ生成・自動アノテーション・マルチタスク事前学習」を組み合わせるアプローチは、他の分野にも応用できそうで面白いと思いました。

openaccess.thecvf.com

AnomalyVFM -- Transforming Vision Foundation Models into Zero-Shot Anomaly Detectors

AnomalyVLMのアーキテクチャ
AnomalyVFMは、Vision Foundation ModelをZero-Shot異常検知器に変換するためのフレームワークです。

Zero-Shot異常検知では、対象ドメインの正常画像や異常画像を使わずに、未知の物体カテゴリに対して異常領域を検出する必要があります。
近年はCLIPのようなVision-Language Modelを使う手法が強い一方で、DINOv2のような純粋なVision Foundation Modelは、異常検知ではやや性能が伸びにくいとされていました。 本研究では、その原因を次の2点と仮定しています。

  1. 既存の補助的な異常検知データセットは、多様性が十分ではない
  2. VFMの適応方法が浅く、出力ヘッドだけの学習では内部表現が十分に変わらない

そこで、AnomalyVFMでは大きく2つの工夫を入れています。

工夫 内容
合成データの作成 まず正常な物体画像を生成し、その上に局所的な欠陥をInpaintingで合成します。その後、正常画像と異常画像の特徴差分から異常マスクを作り、生成がうまくいっていないサンプルを自動でフィルタします。
VFMの効率的な適応 Transformer backboneの内部にLoRA系の低ランクFeature Adapterを挿入し、出力ヘッドだけでなく内部表現も異常検知向けに調整します。さらに、軽量なDecoderとConfidence-weighted pixel lossを使い、合成ラベルのノイズの影響を抑えています。

異常検知は、特に異常側のデータが少なく、実運用でもデータを集めにくい分野です。
本研究では、RADIOをbackboneにした場合、9種類の産業系データセットで平均 image-level AUROC 94.1% を達成し、既存手法を3.3ポイント上回ったと報告されています。

生成データを使ってデータ不足を補いつつ、基盤モデルを少数パラメータで適応させるという方向は、異常検知以外にも応用できそうです。 特に、製造業の検査のように「異常データが少ないが、検出したい」という場面では非常に興味深い研究だと思いました。

openaccess.thecvf.com

VideoSeek: Long-Horizon Video Agent with Tool-Guided Seeking

VideoSeekの概念図(論文より)
VideoSeekは、長時間動画を効率よく理解するためのVideo Agentです。 VLM/LMMで動画を扱う場合、全フレームを入力するのは現実的ではありません。
特に長時間動画では、質問に答えるために本当に必要なフレームは一部だけであることも多いです。

VideoSeekでは、動画全体を密に見るのではなく、質問に対して必要な部分を探しに行く、という考え方を取っています。
具体的には、Think-Act-Observe のループで、LLMが次にどのツールを使うべきかを判断しながら、動画の観測範囲を広げていきます。

ツールは次の3つです。

ツール 役割 使いどころ
overview 動画全体を粗く確認し、大まかなストーリーや候補区間をつかむ 最初に全体像を把握したいとき
skim 候補区間を低コストでざっと確認する 関連しそうな区間を絞り込みたいとき
focus 短い区間を高密度に確認する 回答に必要な細かい証拠を確認したいとき

この仕組みにより、VideoSeekは必要な箇所だけを見ながら回答を生成します。
論文では、LVBenchの字幕あり設定で、論文内で評価したGPT-5 baselineに対して+10.2ポイント改善しつつ、使用フレーム数を約93%削減したと報告されています。

動画解析では「どこを見るべきか」が非常に重要です。 特にAPI経由で動画を扱う場合、確認するフレーム数はコストにも直結します。

VideoSeekのように、Agentが必要な証拠を探しに行く仕組みは、実運用でもかなり有用に思えました。 一方で、論文中でも触れられている通り、異常検知のように突発的・局所的な出来事を探すタスクでは、論理的な流れから重要箇所を推定しにくい場合があります。
このあたりは、用途によって得意・不得意がありそうです。

openaccess.thecvf.com

観光

クアーズ・フィールドへ行きました。
MLB観戦は、日程や移動の都合もあるので、運が良くないとなかなかできません。今回行けてよかったです。 MLBはハンバーガーとビールを買って観戦しました。
球場の雰囲気も含めて、なかなか良かったです。

MLB観戦@クアーズ・フィールド

最後に

久しぶりの現地CVPRでしたが、コンピュータービジョンの中心が大きく変わっていることを体感でき、非常に良い機会でした。 今回得た知見は、AcroYAMALEXでの研究開発やコンペティション活動にも活かしていきたいと思います。

Acroquest Technologyでは、キャリア採用を行っています。
  • Azure OpenAI/Amazon Bedrock/ChatGPT/Claude/Gemini 等を活用した、生成AI・AIエージェントシステムの開発
  • RAG、マルチエージェント、MCP など、LLMを活用した次世代アプリケーションの研究・実装
  • 自然言語/画像/音声/動画解析など、ディープラーニングを活用したAIソリューション開発
  • マイクロサービス・DevOps・クラウドネイティブ技術を活用したシステム開発
  • 技術ブログ、書籍執筆、カンファレンス登壇、OSS活動など、社内外への技術発信も積極推進
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