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Acroquest Technology株式会社のエンジニアが書く技術ブログ

Claudeモデルの「拡張思考」から「適応的思考」への移行

こんにちは、YAMALEXの駿です。
YAMALEXはAcroquest社内で発足した、会社の未来の技術を創る、機械学習がメインテーマのデータサイエンスチームです。
(詳細はリンク先をご覧ください。)

2026年2月にClaude 4.6系が登場してから、Claudeの「思考(Thinking)」を制御するAPIパラメータが変更されました。

それまで「拡張思考(Extended Thinking)」と言われていたものから、新しく「適応的思考(Adaptive Thinking)」というものが登場しました。
その後、私も言われるがままに、 thinking.type: "adaptive" を指定するようになりましたが、実際、この指定により何が変わったのでしょうか?

platform.claude.com

本記事では、「拡張思考(Extended Thinking)」と「適応的思考(Adaptive Thinking)」の違い、および、その制御パラメータである、「思考タイプ( thinking.type )」と「努力パラメータ( output_config.effort )」によって、何がどのように変わるのか検証してみました。

1. はじめに

1.1. 適応的思考の登場

Anthropicが2026年2月に発表したリリースノートでは、Claude Opus 4.6の公開と同時に 適応的思考が推奨モードとして位置づけられ、 努力パラメータ( output_config.effort )もGAとなりました。

現時点で、適応的思考をサポートしているモデルは下記の通りです。

  • Sonnet 4.6
  • Opus 4.8
  • Opus 4.7
  • Opus 4.6
  • Fable 5
  • Mythos Preview

Haikuシリーズでは、現時点で対応しているモデルはありません。

www.anthropic.com

1.2. 拡張思考と適応的思考の違い

Claude の思考機能は、従来の「拡張思考(Extended Thinking)」から、現在の「適応的思考(Adaptive Thinking)」へ移行しています。

拡張思考は、モデルに追加の推論時間を与える仕組みです。
開発者が思考機能を有効化し、どの程度考えさせるかを制御します。

一方、適応的思考は、タスクの難易度や複雑さに応じて、モデル自身が必要な思考量を判断する仕組みです。
開発者は思考の詳細を管理するのではなく、大まかな方針のみを指定します。

簡単に言えば、

  • 拡張思考:人が思考量を管理する
  • 適応的思考:モデルが思考量を調整する

という違いがあります。

1.3. 設定パラメータの違い

思考方式の変更に伴い、それまで利用していた thinking.type: "enabled"budget_tokens が非推奨となりました。

  • thinking.type: "enabled"thinking.type: "adaptive"
  • budget_tokenseffort

thinking.type は、モデルに「思考機能をどの方式で使わせるか」を決める設定です。
従来の enabled は拡張思考を有効にする指定で、現在の 適応的思考( adaptive ) は思考の有無だけでなく、どの程度考えるかをモデル側に委ねるモードです。

budget_tokens は、旧設定で「思考に何トークンまで使ってよいか」を数値で直接指定する値でした。
これに対して 努力パラメータ( effort )は、現在の設定で思考の深さを low / medium / high の段階で大まかに指定する値で、細かな上限指定の代わりに、思考量の強弱をソフトに誘導します。

この変更をまとめると、下の表のようになります。

No 設定項目 従来 現在 概要
1 思考モード thinking: {"type": "enabled"} thinking: {"type": "adaptive"} 有効/無効の制御だけでなく、モデルが必要に応じて思考量を決めるモードが追加された
2 思考量 thinking: {"budget_tokens": N} output_config: {"effort": "low|medium|high"} 思考量を人が細かく制御するのではなく、思考深度とトークン使用量をタスクによってソフトに誘導可能

platform.claude.com

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2. 検証

今回は、従来の設定と 適応的思考 の設定を行った時で、思考量がどのように変化するのかを検証しました。

なお、本記事の検証は各条件・各プロンプトの試行回数が限られているため、結果は統計的に厳密な結論というより、傾向を見るための参考値として読んでいただければと思います。

その前提でも、実務上の判断軸としては十分に使えると思います。

少なくとも今回の結果からは、努力パラメータは「単発タスクでは lowmedium で足りる場面が多い」「エージェントでは medium が無難」「 high は本当に深い思考が必要な場面に絞るべき」という使い分けの方向性は見えてきました。

2.1. 条件

思考量の条件は下記の通りです。

パターン 概要
A thinking.type=enabled + budget_tokens=32000 + インターリーブ思考 OFF
B thinking.type=enabled + budget_tokens=32000 + インターリーブ思考 ON
C thinking.type=adaptive + effort=low
D thinking.type=adaptive + effort=medium
E thinking.type=adaptive + effort=high

A、Bが従来の設定方法、C、D、Eが新しい adaptive を使った設定方法です。

モデルはいずれもClaude Sonnet 4.6を利用しました。

※「インターリーブ思考」はツール呼び出しの間にも推論を挟み、結果を見て計画を動的に更新できる機能です。

platform.claude.com

2.2. プロンプト

今回は、タスクの難易度によって、どのように思考量が変わるかを確認するために、3つの難易度を想定しました。

  • 簡単:思考が不要で、知識のみから回答ができる
  • 普通:知識のみからは回答できず、思考を行う必要がある
  • 難しい:深い思考が必要

具体的なプロンプトはこちら

■簡単

  • 「機械学習」とは何ですか?簡潔に説明してください。
  • 15 + 27 = ?
  • 日本の首都はどこですか?

■普通

  • 機械学習とディープラーニングの違いを説明し、それぞれの利点と欠点を比較してください。
  • 小規模なECサイトの売上が伸び悩んでいます。予算100万円以内で実施できる効果的な改善策を3つ提案してください。
  • ある会社の従業員数が毎年20%ずつ増加しています。現在100人の場合、3年後には何人になり、その間の総人件費(年収500万円/人と仮定)はいくらになりますか?

■難しい

  • 気候変動、人口減少、デジタル化の3つのメガトレンドを考慮して、2040年の日本の地方都市が持続可能性を保つための包括的な都市計画戦略を立案してください。経済、社会、環境の各側面から具体的な政策提案も含めてください。
  • 自動運転車が避けられない事故に直面した時、1人の歩行者を救うために車の乗員5人を危険にさらすべきか、それとも乗員を優先すべきか。功利主義、義務論、徳倫理学の観点から分析し、AI設計者が考慮すべき要素を整理してください。
  • n次元空間において、n個の超平面が一般的な位置にある時に作る領域の数を求める公式を導出し、その証明過程で使用した数学的原理の相互関係について考察してください。

3. 結果

各パターン、各プロンプトについて、思考量を集計した結果を示します。

各難易度(「簡単」、「普通」、「難しい」)それぞれについて、3つのプロンプトを1度ずつ実行し、それぞれの平均を計算しました。

特筆すべきは、effort=low および medium の設定を行った場合に、「簡単」のプロンプト3つの内2つのプロンプトにおいて、思考量が0トークン(思考せずに回答している)になることが確認できました。

パターン毎の思考トークン数

詳細な数値が見たい方はこちら

表中の列は下記内容です。

  • 思考出力率:思考を少しでも出力した質問の割合
  • 思考トークン:思考に利用したトークン数
  • 総出力トークン:思考と最終出力を合わせたトークン数

■簡単

No パターン 思考出力率 思考トークン 総出力トークン
1 A 1.00 38.7 149.3
2 B 1.00 38.7 133.3
3 C 0.333 8.7 102.3
4 D 0.333 8.7 137.3
5 E 1.00 38.7 132.7

■普通

No パターン 思考出力率 思考トークン 総出力トークン
1 A 1.00 185.7 1015.3
2 B 1.00 174.3 1105.7
3 C 1.00 115.0 828.7
4 D 1.00 94.7 909.7
5 E 1.00 131.0 1006.7

■難しい

No パターン 思考出力率 思考トークン 総出力トークン
1 A 1.00 665.3 3560.3
2 B 1.00 244.7 3611.7
3 C 1.00 182.0 2685.3
4 D 1.00 273.7 3718.0
5 E 1.00 925.3 4155.0

■全プロンプト サマリ

No パターン 思考出力率 思考トークン 総出力トークン
1 A 1.00 296.6 1575.0
2 B 1.00 152.6 1616.9
3 C 0.78 101.9 1205.4
4 D 0.78 125.7 1588.3
5 E 1.00 365.0 1764.8

3.1. 分析

上記結果から、下のことが言えます。

  • 「普通」の難易度のプロンプトに対しては、従来の設定と 適応的思考 設定で、大きな差は得られなかった。
  • 「簡単」な難易度のプロンプトに対しては、適応的思考 設定を使うことで、思考をせずにモデルが返答を返しており、 トークン数の節約が可能で、出力するトークンが少なくなることから速度改善も期待できる
  • 「難しい」難易度のプロンプトだと、 努力パラメータの設定が効いてきて、思考量が大きく変動するようになる

4. 検証(エージェントの場合)

上記の検証では、単純にモデルを呼び出しただけですが、エージェントとしてツール利用などをするような場面ではどうなるか、気になったので、追加で検証しました。

エージェントはStrands Agentsを使って作成し、モデルとして各設定を行った strands.models.BedrockModel を設定しました。

ツールとしては、TavilyのMCPサーバーを用いたウェブ検索ツールを設定しました。

4.1. 条件

思考量の条件は「2.1.」と同じ条件を使用しました。

4.2. プロンプト

エージェントを使った検証でも、タスクの難易度によって、どのように思考量が変わるかを確認するために、3つの難易度を想定しました。

今回は、ウェブ検索ツールを持ったエージェントを作成するため、ウェブ検索を行う前提のプロンプトになっています。

  • 簡単:思考が不要で、検索結果から回答ができる
  • 普通:検索結果のみからは回答できず、思考を行う必要がある
  • 難しい:検索を行ったうえで、深い思考が必要

具体的なプロンプトはこちら

■簡単

  • 2026年の米国大統領は誰ですか?出典URLを1つだけ付けて1-2文で答えてください。
  • 今日時点のUSD/JPY為替レートを示し、参照したページURLを1つ付けてください。
  • OpenAIの公式ブログで最新公開記事のタイトルとURLを1件だけ教えてください。

■普通

  • 主要3社(OpenAI, Anthropic, Google)の過去12か月の主要AI関連発表を各2件ずつ調べ、表形式で要約してください。各行に出典URLを1つ付けてください。
  • 日本で個人が使える主要クラウドストレージ3種の無料枠・最安有料プラン・代表的セキュリティ機能を比較し、用途別の推奨を示してください。出典URL付きで回答してください。
  • AWS, Azure, GCP の公式ステータスページを確認し、東京リージョンに関連する現在の障害有無を簡潔にまとめてください。参照URLを明記してください。

■難しい

  • 日本の生成AI関連ガイドライン/規制の2024-2026年の主要更新を時系列で整理し、企業の実務対応を優先順位付きで提案してください。最低6つの出典URLを示してください。
  • 米国・EU・日本のAI安全性/規制政策を比較し、共通点・相違点・企業影響を分析してください。最低6ソースを相互検証し、矛盾があれば明示してください。
  • 2026年時点の主要ブラウザ(Chrome/Edge/Safari/Firefox)のWebGPU対応状況をOS別に比較し、開発チーム向け移行戦略を提案してください。最低8つの出典URLを示してください。

5. 結果(エージェント)

各パターン、各プロンプトについて、思考量を集計した結果を示します。

各難易度(「簡単」、「普通」、「難しい」)それぞれについて、3つのプロンプトを1度ずつ実行し、それぞれの平均を計算しました。

パターン毎の思考トークン数(エージェント)

詳細な数値が見たい方はこちら

表中の列は下記内容です。

  • 思考出力率:思考を少しでも出力した質問の割合
  • 思考トークン:思考に利用したトークン数
  • 総出力トークン:思考と最終出力を合わせたトークン数

■簡単

No パターン 思考出力率 思考トークン 総出力トークン
1 A 1.00 45.0 260.0
2 B 1.00 237.0 509.0
3 C 1.00 58.7 286.4
4 D 1.00 276.7 514.0
5 E 1.00 211.0 485.0

■普通

No パターン 思考出力率 思考トークン 総出力トークン
1 A 1.00 101.0 2016.0
2 B 1.00 861.3 2531.6
3 C 1.00 189.7 1659.7
4 D 1.00 588.0 2402.3
5 E 1.00 516.0 2790.3

■難しい

No パターン 思考出力率 思考トークン 総出力トークン
1 A 1.00 82.0 6356.0
2 B 1.00 721.3 7317.0
3 C 1.00 77.0 6856.3
4 D 1.00 778.0 6977.3
5 E 1.00 726.7 7563.4

■全プロンプト サマリ

No パターン 思考出力率 思考トークン 総出力トークン
1 A 1.00 76.0 2877.3
2 B 1.00 606.6 3452.7
3 C 1.00 108.4 2934.1
4 D 1.00 547.6 3297.9
5 E 1.00 484.6 3549.6

5.1. 分析

エージェントとして利用した場合は、「3.」で見られた、「簡単」な問題で思考を全くしなくなる事象は発生しませんでした。

effort=lowの場合の思考量が大きく下がっているのが見て取れます。
しかし、 effort=medium/high の間では大きな差が見られませんでした。

これは「難しい」難易度、として指定したプロンプトも思考をそれほど必要としなかった可能性があります。

検索した結果を元に、さらに深い思考を行わないと回答できないようなプロンプトがあれば、 effort=medium/high の差分が見られたかもしれません。

なお、B、D、Eでは、一度検索した後に、追加の情報を得るためにもう一度検索しなおす、という挙動が見られたのに対して、 A、Cでは一度検索して、そのまま回答に移るような挙動が見られました。

これは、インターリーブ思考をONにしたときの挙動にとてもよく似ています。

5.2. 品質面の補足

回答内容の品質も確認したところ、単発でモデルを利用するタスクでは、 effort=lowmedium でも大きな品質劣化はほぼ見られませんでした。
特に「簡単」な質問では、冗長な説明が減り、むしろ簡潔さが改善するケースも見られました。

一方、エージェントタスクでは effort=medium が最も安定しており、最新性・出典の妥当性・指示遵守のバランスが良い傾向が見られました。
effort=high は思考量自体は増えるものの、必ずしも最新性や出典品質の改善にはつながりませんでした。

まとめ

今回はClaudeの適応的思考で、思考量がどのように変わるのかを検証してきました。

適用的思考と努力パラメータを組み合わせることで、十分に簡単なタスクでは、 effort=low/medium を設定することにより、思考をスキップしてトークン数が減るため、速度改善も期待できることが確認できました。
また、品質面を見ると、単発タスクでは effort=low/medium でも大きな品質差は見られず、エージェント利用では effort=medium が最も安定していました。

一方で、 effort=high は思考量は増えるものの、必ずしも最新性や出典品質の改善にはつながりませんでした。

以上のことから、下記の様な使い分けができると思います。

  • 事実確認や要約など、軽い単発タスク

    • thinking.type=adaptive
    • output_config.effort=low
  • 通常のエージェントタスク。まずはこれを試してみる

    • thinking.type=adaptive
    • ouput_config.effort=medium
  • 難しい問題や長時間の推論が必要なタスク

    • thinking.type=adaptive
    • output_config.effort=high

今回、しっかりとした検証ができたので、これからは自信をもって 適応的思考 を利用していきます。